高史明

統計をとると、数々の事実が明らかになった。たとえば「社会支配指向」が強い人は、ネットの使用時間が長かった。この指向は、簡単にいえば弱肉強食主義。「下層の人間は搾取されても仕方ない」という考え方だ。 さらに匿名掲示板である「2ちゃんねる」の、個別の書き込みをテーマごとにまとめて投稿した「まとめブログ」をよく見る人は、「現代的レイシズム」と呼ばれる差別主義的な特徴が強いという傾向も分かった。 「まとめブログ」は単なるニュースの羅列ではなく、個人のコメントが付いている。「その感情的な感想が、読者に面白いと思わせる。新聞などと違い、ネット情報に期待されるのは正確さより面白さ。言論のマーケットでは、正しい情報が生き残るとは限らない。不快感や怒りをはじめ、感情を呼び起こすものの方が広まっていく」という。 「面白い」と思われた情報はどんどん拡散し、マスメディアの情報よりもネットでは大量に出回るようになる。すると「事実と違っても、真実だと信じられていく。一人の論理的な意見より、大勢の不確かな情報が信用される」 そして「みんなが言っている」という感覚が、これまで「表だって言えなかったこと」を現実社会でも言える雰囲気をつくった。たとえば「沖縄の地元紙をつぶせ」というネット上の匿名の書き込みと同じことを、公的な場で発言する作家が現れた。